ジャスミス



その首がこの手に収まってしまったときは驚いた。


   ジャスミス。



「――抵抗しろよ。」

私の手は今、こいつの首を絞めている。
こいつを殺そうとしている。

「何で?」

それなのにこいつは抵抗もしなければ、叫びもしない。
こいつからしてみれば突然起きた事なのに。
こいつはただすべてを知っているかのように、事をすべて受け止めていく。
まるで、これがシナリオのように。


「抵抗してほしい?」
「いや、別に。」

このままいけばこいつは死ぬのに。
何故、こんな事を言うのだろう。


「どこまでも馬鹿だから教えてやる。私は今、お前を殺そうとしている。」
「知ってるさ」

そう言って笑う。あり得ない話だ。

「本当に馬鹿だな、死ぬぞ?」
「ああ、いいさ。」

おかしい。と、思う。


「“あれのため”だろ?これ」
「っ!うるさい!!」
「――ゴメンな。」
「意味が分からない!黙れ!!」

のどの辺りが熱くなった。


「私は!!……お前を殺すんだ。」
「本望だ」
「――お前は救いようのない馬鹿だ。」
「ずっと前から知ってるよ」

本当に、本当に。馬鹿としか言いようがなくて。
胸からあふれ出す想いも忘れた。


「最後に言うことは」

せめて最後くらいと、話を聞こうとした。
首にある手は力を強めた。
こいつの本当に最後の言葉にしようと思った。
決心を固めた。


それでもお前は最後まで、笑顔のままで。


「そうだな、やっぱり―――」

笑顔のままで、私の手の中に。
涙があふれた。
最後まで馬鹿で、馬鹿で。



『そうだな、やっぱり―――』

『愛してる。』



私だって。
「―――愛してるよ」


止まらない涙に。
救う手だてなど見つからない。


あとがき
 まず題名が意味不明ですね。
 そっれと主人公、また名無し。
 さらにもう一人、名無し2。
 やばいかな?


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